相続トラブルを回避するために活用できる遺言
相続発生後の揉め事を、100%予防できる方法はありません。
なぜなら、世の中には理不尽な主張をする相続人や、相続人ではないにもかかわらず遺産分割協議に関与してくる親族などが一定数存在するからです。
この点、本人の遺志に従って、事前に「遺言」を作成して遺産の承継先を指定することは、相続トラブルの予防、円滑な相続手続きの実現という面で非常に有益です。
例えば、子がいない夫婦の夫に相続が発生したケースにおいて、生前に夫が遺言を書いていない場合、夫の両親(夫の祖父母)がすでに亡くなっていると、夫の遺産は「妻が4分の3」、「夫の兄弟姉妹が4分の1」の割合で共有することになります。
この場合、遺産の共有状態を解消するためには、相続人全員で遺産分割協議をする必要があり、妻は、夫の兄弟姉妹全員と(関係性が悪い場合であっても)遺産の分け方を話し合わなければなりません。
実務では、このような事態を避ける方法として、生前に夫が「すべての財産を妻に相続させる」という内容の遺言を作成することが多いです。
この遺言があれば、妻は、夫の兄弟姉妹と遺産分割協議をすることなくすべての遺産を取得できます(兄弟姉妹には遺留分がないため、遺留分侵害額請求をされるリスクもない)。
遺言のほかにも相続発生時のトラブルを予防する方法として「家族信託」や「生前贈与」などが活用できるケースもありますが、法律や税金の専門知識が必要なことが多いため、実際に取り組む際は、司法書士・税理士などに相談することをおすすめします。
遺言がない場合・ある場合の違い
遺言と遺留分の法的性質を活用したモデルケース
子がいない夫婦で両親も他界している状況で、夫は妻にすべての財産を相続させたいと考えている
★遺言で解決
兄弟姉妹と遺産分割協議をすることなくすべての遺産を取得できる。
また、法律上、兄弟姉妹には遺留分がないため、後日、遺留分侵害額請求をされるリスクもない