「遺贈寄付」という新しい選択肢
自身の遺産は、法定相続人や親族以外の公益的な活動をしている団体などに寄付することも可能です。
その場合「遺言」に寄付をしたい財産の内容と寄付先の情報を記載しておく必要があります。
生前お世話になった医療機関や応援している団体などに遺産を有効活用してもらえるため“人生最期の自己決定権の行使としての寄付”いわゆる「遺贈寄付」として現在注目を集めています。
この遺贈寄付を行う際に、注意をしなければいけない点があります。
それは多くの場合、遺贈寄付する財産が「金銭」でなければ、遺贈寄付先が受け取ってくれないということです。
そのため、遺贈寄付を予定している財産が不動産や株式の場合は、現金に換価した上で、遺贈寄付先に引き渡すことを想定する必要があります。
遺産を換価する手続きは、遺言の中で遺言の内容を実行してくれる「遺言執行者」を定めるとスムーズに行うことができます。
遺言執行者は、未成年者と破産者以外であれば誰でも就任できますが、実務上は、専門知識が求められるケースや、煩雑な手続きを伴うケースもあるため、確実で円滑な遺贈寄付を実現できるよう、司法書士や弁護士などの専門家に依頼する人も多いです。
なお、遺贈寄付自体を受け入れていない団体も存在するため、事前に遺贈寄付先に確認をしておくのが安心です。
遺産を役立てて欲しいという気持ちで「遺言」を書いたにもかかわらず、自身が亡くなった後に遺贈寄付ができない事態に陥ってしまっては、せっかくの優しい想いが無駄になってしまう可能性が高いからです。
遺贈寄付の一般的な流れ
① 財産の整理・把握
自身の財産を整理・把握して、遺贈寄付する財産を検討する
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② 遺贈寄付する団体等の選定
遺贈寄付する財産を「どこに」、「どれくらい」寄付するか決める
※金銭以外の財産(不動産など)の寄付を検討している場合は、寄付先が金銭以外の財産の寄付を受け入れていない場合があるため、事前に取扱いを確認する
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③ 遺言書の作成
遺贈寄付を実現するための「遺言書」を作成する
※遺贈寄付の確実な実現のために遺言執行者を指定しておく
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④ 遺言執行(遺贈寄付の実現)
・遺言執行者が「遺言書」の内容に従って遺贈寄付を行う
遺贈寄付のメリット・デメリット
メリット
・人生最期の自己決定権として、遺産の使途を自分で決めることができる
・社会貢献につながる
・老後資金に影響がない(相続が開始するまで遺贈寄付は行われないため)
・後世に想いや自身の名前を遺すことができる
デメリット
・遺贈寄付の内容によっては、相続人が不満を抱き、寄付先に対して遺留分侵害額請求をする可能性がある