家庭裁判所に申立てられた遺産分割調停は、一般的に、以下の流れで進みます。
裁判所から共同相続人全員に対して、調停に関する呼出しの通知が送られ、呼び出された相続人全員は、家庭裁判所の裁判官と、調停委員の有識者2名(この3人を「調停委員会」といいます)を交えて、遺産の分け方について話し合いをします。
調停の中では、それぞれの相続人が、どの財産が欲しいのか、どの財産がいらないのかなど具体的な希望を裁判官や調停委員に伝え、その内容をもとに相続人全員が納得するような遺産の分け方を協議し、最終的に相続人全員が合意できれば、その合意に従って遺産を分割することになります。
話し合いがまとまった場合
遺産分割の話し合いがまとまった場合は、合意した内容が調停条項として定められ、これを記載した「調停調書」が作成されます。
この調停調書は、審判と同一の効力がありますので、金銭の支払いについて定められていれば、他の相続人に対して強制執行をすることが可能であり、不動産の取得が条項に定められていれば、当該不動産を取得することになった相続人が、単独で名義変更(相続登記)をすることができます。
話し合いがまとまらない場合
遺産分割調停は、基本的に、相続人全員が納得できる内容の協議が成立するまで話し合いは続けられますが、どうしても全員の納得が得られない場合には、調停は「不成立」となり(これを「不調」といいます)、遺産分割調停は終了します。
家庭裁判所の家事事件の調停では話し合いがまとまらなかった場合、「遺産分割審判」という手続きに移行することになります。
遺産分割審判は、裁判官が、相続人全員の主張を聞いた上で遺産の分割方法を決めるものです。
遺産分割審判の注意点
遺産分割審判においては、裁判官が、遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業などを考慮して、遺産分割の内容を決定するため、必ずしも相続人の全員が納得できる結果になるとは限りません。
また、裁判官は、審判をするにあたって、遺産の全部または一部を競売や任意売却により金銭に換価することや、特定の相続人に代償金を支払うよう命令できます(例:特定の不動産を1人の相続人に相続させる代わりに、その相続人から他の相続人に対してお金を支払わせる)。
つまり、遺産分割審判では、遺産分割調停で希望した遺産の分け方と異なった分割内容が、裁判官の「審判」として決められてしまうこともあります。
参照条文
(遺産の分割の基準)
民法第906条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。