株主に相続が発生した場合、遺言がある場合や遺産分割協議が成立している場合を除き、被相続人が所有していた株式は「法定相続人の共有状態」となります。
この場合、相続人の中から1名権利を行使する者を定めて会社に通知することで、議決権を行使することができます(会社法第106条)。
実務上、相続人同士の関係性が良い場合は、特段問題なく遺産分割協議が成立するため、株式の権利行使者を定める必要性も生じず、相続人にスムーズに承継されることが多いです。
しかし、相続人同士の関係性が悪い場合は、株式を取得する相続人はもとより、権利の行使者すら決まらず、議決権を行使できない状況になってしまうケースがあります。
中小企業等の大株主の相続において、このような状況になってしまうと、定時株主総会における決算承認なども行えず、株主総会が機能しなくなってしまう可能性があるため、株式の承継について、将来揉める可能性がある場合は、遺言や家族信託(民事信託)などを利用して相続対策をしておいた方が良いでしょう。
参照条文
共有者による権利の行使
会社法第106条 株式が2以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者1人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。