相続対策の中で、遺留分制度がネックになることは多く、実際に、「生前に遺留分の放棄はできますか?」というご相談は、多く寄せられます。
結論から言えば、生前の遺留分の放棄は可能ですが、相続の開始後と比べて手続きが大きく異なるため注意が必要です。
◆相続の開始前に遺留分を放棄する方法
生前に遺留分を放棄するためには「家庭裁判所の許可」が必要です
家庭裁判所の許可が必要とされている理由は、本人が生きている間に、遺留分権利者に対して本人や他の推定相続人が不当な圧力をかけ、遺留分を請求する権利を強制的に奪うことを防止するためです。
なお、遺留分の放棄は無制限に認められるわけではなく、仮に、本人と遺留分権利者が合意をしている場合であっても、以下の要件をすべて満たさない限り、家庭裁判所の許可はおりません。
① 遺留分権利者の自由な意思に基づいて行われていること
② 遺留分の放棄について合理性・必要性が認められること
例:自宅購入の際に多額の贈与を受けていて、現在収入も安定している。
他の相続人との平等性も考慮して、遺産を取得する意思がない。
③ 遺留分権利者に対して代償があること(放棄の代償性の有無)
例:生前に経済援助や多額の贈与を受けている。
◆相続の開始後に遺留分を放棄する方法
相続の開始後の遺留分の放棄は、許可などは不要です。
よって、任意に放棄の意思表示を行うことで、遺留分の放棄が可能です。
また、遺留分侵害額請求権を相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときや、遺産を一切受け取らない内容の遺産分割協議書が成立した場合も、遺留分を放棄したことと同視できます。