遺留分の金額の算定方法と根拠 2ステップで簡単!自分でも計算できる!
遺留分の制度は、被相続人(亡くなられた方)が所有していた財産(相続財産)について、一定割合の取得を、一定の法定相続人に保障する制度です。
この「一定割合」を確保することができる地位を「遺留分権」といい、遺留分を持っている法定相続人のことを「遺留分権利者」といいます。
今回のテーマは、ご自身に遺留分権があるかどうか、またどのように金額を計算するかについてご説明します。
【検討するケース】
Aさん(亡くなられた方):相続財産として預金5000万円
Bさん:Aさんの妻
Cさん:AさんとBさんの長男
Dさん:Aさんの前妻(Aさんとの間に子供はいない)
【Aさんが残した遺言の内容】
◆ 相続財産のうち4000万円をDさんに遺贈する。
◆ 相続財産のうち1000万円をBさんに遺贈する(相続させる)。
☆ 遺留分の計算は、簡単な2つのステップで計算できます。
STEP1 遺留分は「① 総体的遺留分」→「② 個別的遺留分」の順序で計算する
遺留分は、亡くなられた方の財産について、(遺言書の記載内容を問わず)「一定割合」を「一定の法定相続人」に保障しようという制度ですから、まずは財産のうち「どの程度の割合」が保障されるのか、ということが問題になります。
法律(民法1028条)ではこの点について、以下のとおり定めています。
直系尊属のみが相続人である場合・・・亡くなられた方の財産の3分の1
それ以外の場合 ・・・亡くなられた方の財産の2分の1
亡くなられた方の直系尊属(具体的には、父親や母親など家系図で上流の位置にある方)「のみ」が法定相続人である、というケースはあまり多くはないでしょう。
ですから、基本的には「亡くなられた方の財産の半分が遺留分全体の対象となる財産」という理解でよいと思います。
例えば、上記のケースで、Aさん(亡くなられた方)に5000万円の財産があったとして、ご家族にBさん(奥様)とCさん(お子様)がいらっしゃった場合、「直系尊属のみ」ではありませんから、遺留分の全体は、【5000万円×1/2=2500万円】になります。
これが「総体的遺留分」と呼ばれるものです。
さて、ひとまず「① 総体的遺留分」の計算ができたわけですが、これだけではご自身の遺留分はまだ決定しません。
次に、法定相続人各自の遺留分である、「② 個別的遺留分」を計算する必要があります。
個別的遺留分の計算は、簡単に言えば、「① 総体的遺留分」として保障された財産の「枠」を、法定相続人の間でどのように分けるかを計算することです。
この計算には、いわゆる「法定相続分」の割合が使われます。
今回のケースでは、Bさん(妻)とCさん(長男)が法定相続人となり、それぞれの法定相続分は、民法上の規定から「妻:1/2」、「子(長男):1/2」です。 よって、【2500万円×1/2=1250万円】が、Bさん、Cさんそれぞれの遺留分(個別的遺留分)の金額となります。
STEP2 実際に受け取った財産と個別的遺留分の金額を比べましょう
今回のケースでは、Aさんが遺言によって、4000万円をDさんに遺贈し、1000万円をBさんに相続させていますので、Bさんの遺留分は以下の金額になります。
Bさんの遺留分 ➡ 1250万円(個別的遺留分の額)-1000万円(相続額)=250万円
次に、Cさんの遺留分ですが、Cさんは遺言では一切の財産を取得していないので、遺留分は以下の金額になります。
Cさんの遺留分 ➡ 1250万円(個別的遺留分の額)-0円(相続額)=1250万円
つまり、BさんとCさんは上記の金額(遺留分)が侵害されているということになります。そこで各金額について、BさんとCさんの意向によっては、Dさんに対して、「遺留分制度で保障されている金額に足りないので、それぞれの不足分の金額を支払ってください」と請求することになります。
この請求のことを「遺留分減殺請求」と言います。
以上が遺留分の計算方法の概要です。
おわかりいただけたでしょうか?
今回のケースは、亡くなられた方の財産として金銭のみを想定していますが、実際には、現金や預貯金のみならず不動産や株式等の証券など、その財産の金銭的価値を評価することが必要になるケースもよくあります。
評価方法については、専門的な知識が必要となるケースも多いので、できれば専門家にご相談されることをオススメします。
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