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法定後見の申立て手続きの方法とポイント

法定後見制度の利用を検討しているけれど、どのように利用するかわからない・・・

そういったご相談は、当窓口にも多く寄せられます。

今回は、実際に法定後見制度を利用するための申立て方法をご紹介したいと思います。

申立書の書式や必要な書類、申立書と一緒に提出する郵券(切手)は、各家庭裁判所によって変わることもあるので、申立て前に各家庭裁判所のホームページ等で確認してください。

なお、本記事は、東京家庭裁判所及び東京家庭裁判所立川支部への申し立て(東京都内在住)を前提として、東京家庭裁判所から提供されている書式で説明させていただきます。

1.まずは、申立人になれる人の確認です。

検察官などにも申立権はありますが、実際には本人、配偶者、四親等以内の親族が申立人になることがほとんどだと思います。

ちなみに四親等以内の親族というのは、本人から見て子・孫・孫の子・孫の子の子・親・祖父母・祖父母の親・祖父母の親の親・兄弟姉妹・甥姪・甥姪の子・親の兄弟・親の兄弟の子・祖父母の兄弟・配偶者の親・配偶者の祖父母・配偶者の祖父母の親・配偶者の子・配偶者の孫・配偶者の孫の子・配偶者の兄弟姉妹・配偶者の甥姪・配偶者の親の兄弟です。

結構広い範囲に認められています。
この中にあなたが入っていれば、申立人になることが出来ます。

✔️あなたに申立権はありますか?

2.次に申立てをする管轄の裁判所を確認してください。

裁判所のホームページで管轄の確認が出来ます。
http://www.courts.go.jp/saiban/kankatu/

本人の住民票上の住所を管轄する家庭裁判所に申立てをしてください。
管轄の裁判所によって書式や必要とする書類、申立費用が変わることがあるので注意してください。

✔️申立てをする(管轄)家庭裁判所を確認しましたか?

3.次は必要書類を集めます。

必要書類と、それぞれの注意点は以下の通りです。
なお、ほとんどの書類は申立日から3か月以内に発行されたものである必要があるので注意してください。

本人の戸籍と住民票

籍は本籍地。住民票は住所地の役所で取得します。

申立人と本人の関係がわかる戸籍

申立人と本人の関係がわかる戸籍というのは、申立人が本人の四親等以内の親族であることを証明するためのものですが、申立人が本人の子や配偶者であれば、申立人の戸籍を取得すれば本人も載っていますので、それだけで本人との関係を証明することができますが、申立人が本人の甥などの場合は少々手間が掛かります。

甥であることを証明するためには、自分の親が、本人の兄弟であることを証明することになるので、少なくとも自分と親の戸籍は必ず取得する必要があります。

その上で本人との関係を証明するのに不十分であれば、追加で除籍や改製原戸籍も必要になる場合もあるので注意してください。

本人の登記されていないことの証明書

取得できる場所がかなり限られていて、東京であれば「東京法務局の本局」でのみ取得可能です。

なお、郵送による取得も可能です。なお、郵送で取得する場合にも、本人との関係を証明するための戸籍等が必要になります。

また、登記されていないことの証明書にもいくつか種類があり、後見等申立の際は必ず「成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人とする契約がない」ことを証明してもらいます。

1通550円です。(平成29年11月25日現在)

後見人等候補者の戸籍と住民票

申立書に後見人等候補者を記載する場合は必要となります。

診断書と付票

診断書は基本的に、かかりつけのお医者さんに書いてもらいます。

付票は、もし家庭裁判所が本人の鑑定が必要と判断した場合に、その鑑定を引き受けてくれるのか、引き受ける場合はいくらでやってくれるのか、などをお医者さんに確認するためのものです。

鑑定については、申立時点では行うのかどうかは未定ですので、費用の準備は必要ありません。

実際に、鑑定になるのは全体の1割くらいですが、鑑定を行う旨の連絡が裁判所よりあった場合は、鑑定費用(5万〜10万くらい)を納める必要がありますので、注意してください。

同意書

この申し立てをするにあたり、親族は同意しているのか、また、後見人等候補者がいるのであれば、後見人等にその候補者が選任されることに同意しているのかを確認するための書面です。

なお、ここでいう親族とは推定相続人のことです。

これは必ず必要な書類ではありませんが、提出することにより、審判が出るまでの時間を短縮することが出来るので可能な限り用意するようにしてください。

✔️申し立てに必要な書類は取得しましたか?

4.次は、作成しなくてはならない書類の準備です。

基本的に、事実関係を確認するための書類です。深く考えずに、ありのままを書いてください。

親族関係図

本人を中心として、家系図のようなものを作成する必要があります。
生年月日や死亡年月日等もわかる範囲で記入します。

どこまで記載するべきかは特に決められてはいませんが、少なくとも推定相続人がわかる範囲の記載は必須です。

本人の財産目録

申立時点の本人の財産を一覧にしたものを作成します。
プラスの財産だけでなく、借入金などの負債も記載します。

そして、その財産を証明するものとして、

・預貯金・・・通帳
・不動産・・・登記簿謄本
・有価証券・・・報告書や通知書
・保険契約・・・保険証券
・借入金貸付金・・・借用書や契約書

などのコピー等を一緒に提出する必要があります。

一緒に住んでいないなどの理由で、財産の把握ができない場合もあるとは思いますが、わかる範囲で大丈夫です。

後々財産が判明したからといって「何かしらのペナルティが科せられる!」ということはありません。

収支報告書

直近2か月の収入と支出を記載します。

そして、ここでもその収入と支出を証明するものとして領収書等を添付する必要があります。

ただ、銀行口座から振り込んだり、振り込まれたりしている場合は、通帳からその入出金の内容が明らかな場合に限り、領収書等を省略することが可能です。

例えば年金収入や水道光熱費、税金などは、多くの人は口座振り込みまたは引落になっているので領収書等の添付は不要となります。

申立事情説明書

この説明書は、何の為にこの申し立てをするのか、本人の現在の状況や、経歴、病歴等を申告することになります。

本人の状況を1番わかっている方が知っていることをそのまま記入します。
また、裁判所からの連絡や調査官の面談時に注意してほしいこと等があれば記載します。

後見人等候補者事情説明書

この説明書は、申立書に候補者を記載する場合に必要となる書類です。

候補者と本人の関係や、候補者の収入、財産、今後の方針などを申告します。
候補者自身が記入します。

✔️全ての書類を作成しましたか?

5.ここまで全ての準備が出来たら最後は申立書の準備です。

申立書

申立書には、申立人、本人、後見人等候補者の情報と、この申し立てによって後見人、保佐人、補助人のいずれを選任してほしいのかを記載します。

ただし、いずれを選任して欲しいのかは、勝手に選ぶことは出来ません。

これは、お医者さんが書いてくれた診断書の3の項目に、後見相当、保佐相当、補助相当といったことが書かれていますので、これにしたがって選ぶことになります。

代理行為目録、同意権目録

保佐相当または補助相当の場合は、保佐人または補助人に代理権を付与したいのであれば、代理行為目録の中から、本人のために必要な代理行為を選択して、チェックした上で申立書と一緒に提出する必要があります。

もし、代理行為目録を提出しなかった場合、保佐相当の場合は、保佐人には何の代理権も付与されず、同意権のみが自動で付与されることになります。
なお、付与される同意権は、同意行為目録に記載されたすべての行為です。

さらに、補助相当の場合は、同意行為目録の中から、本人のために必要な同意行為を選択して提出しなければなりません。

もし、補助相当の場合に、代理行為目録、同意行為目録のいずれも提出しなかった場合、選任された補助人には、何の代理権も同意権も付与されていないことになり、正直、本人の為にほとんど何もすることができません。

補助相当の場合は、必ず代理行為目録、同意行為目録のいずれかは提出するようにしましょう。

なお、代理行為目録、同意行為目録にチェックを入れた行為が必ず認められるわけではなく、申立て後の調査官との面談で、本人にとって必要なものかどうか判断されることになります。

印紙と郵券(切手)

最後に申立書と一緒に提出する印紙と切手を用意します。

用意する金額や内訳は、後見・保佐・補助により変わります。
また、家庭裁判所によっても用意する切手は変わる場合があるので注意してください。

なお、東京家庭裁判所管轄の場合、後見相当で印紙3,400円、切手3,220円が必要で合計6,620円です。

内訳は、下のチェックシートでご確認ください。

✔️申立書と印紙切手の準備は出来ましたか?

すべての準備ができたら、最後に、東京家庭裁判所のホームページにあるチェックシートで最終チェックを行ってください。

なお、このチェックシートも申立書類一式と一緒に裁判所に提出します。

✔️チェックシートでチェックしましたか?

6.申立て

すべての準備が整ったら、裁判所へ申立てを行うのですが、申立て時の注意点や、申立て後の流れについては、次回にお話しさせていただきたいと思います。

どうでしょうか?

この記事を読んで、自分にも出来そうだと感じられた方は、ぜひチャレンジしてみてください。

ちょっと難しそうだ、不安だと感じた方は、是非、当窓口にご相談ください。

成年後見の申立て業務に特化した司法書士が、後見人等が選任されるまで、スムーズに手続きが進むようにサポートさせていただきます。

私たちのサービスが、お役に立ちますように。

当記事は、記事執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
この記事の監修者

新宿の司法書士 中下総合法務事務所
代表司法書士 中下 祐介

司法書士/簡易裁判所代理権/民事信託士
宅地建物取引士/家族信託普及協会 会員
ファイナンシャルプランナー

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