被相続人の遺産が減少している理由を特定する
相続発生後、被相続人の財産が想定していたものより少ないことがあります。
例えば、預貯金が大幅に減っていたり、不動産が生前に名義変更(所有権移転登記)されていたりするケースです。
まず、原則として、相続開始時に存在する財産が、遺産分割協議の対象となる遺産です。
そのため、預貯金の残高が想定より少なかった場合や、まとまったお金が相続開始前に複数回引き出されている場合であっても、生前に被相続人自身のために使ったものであれば、残っている財産のみが遺産分割協議の対象となります。
一方で、相続開始前にまとまった預貯金が特定の相続人に振り込まれている場合や、不動産が特定の相続人に生前贈与されている場合は特別受益に該当する可能性があり、その金額によっては、他の相続人の遺留分が侵害されている可能性もあります。
また、特定の相続人が、被相続人の銀行口座から無断でお金を引き出して私的に使用していることもあります。
このようなケースで、被相続人が生前に「不当利得返還請求」をしないまま相続が開始してしまったときは、この請求に関する権利は相続人に承継されます。
つまり、被相続人のお金を私的に使用した相続人に対して、他の相続人は、自身が相続した不当利得返還請求権を行使することができます。
ただし、私的使用に関する立証などのハードルが高いほか、訴訟も見据えて対応する必要があるケースも多いため、まずは弁護士に相談をするのがよいでしょう。
不当利得返還請求とは
正当な理由なく利益を得た人に対して、利益を返還してもらう請求をすること
一般的な不当利得返還請求の流れ
※不当利得返還請求権は、請求できるときから10年もしくは請求できることを知ったときから5年間のいずれか早い方で時効となる