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成年後見人の仕事内容とは?

ある事情から「成年後見制度」を利用することになった場合に、成年後見人がしてくれること・すべきことのイメージがわかないため、当窓口にご相談いただくケースは多いです。

そもそも「成年後見人」は何をしてくれて、何をすべきなのでしょうか?

端的に言えば、成年後見人が就任した場合、成年後見人は、本人のために「財産管理」身上監護をすることになります。

ただ「財産管理・身上監護」といっても、とても抽象的な表現ですので、実際に何をするのかよく分からない方が多くいらっしゃると思います。

そこで今回は、成年後見人等が就任した場合、実際にどんなことをしてくれるのか、また、自分が成年後見人に就任した場合に何をしなければならないのかについてお話ししたいと思います。

なお、補助人や保佐人の場合は、どのような同意権、代理権をつけるのかによって大きく変わってしまうので、今回は成年後見人にテーマを絞ってお話しします。

1.収支状況等の把握(就任した直後~1ヶ月程度)

成年後見が開始されると、成年後見人選任の審判書が送達され、その後2週間を経過するとその審判は確定します。

ここから成年後見人の仕事が始まります。

まず、本人の財産状況と収支状況を把握するために、本人もしくは本人に代わり財産を管理していた方から通帳等の財産を確認できる書類を預かり、お金の流れや残高をチェックします。

それと併せて銀行や証券会社に成年後見制度利用の届出を行うことによって、以後は成年後見人が単独で預貯金の入出金や証明書発行、各種手続きを代理することが出来るようになります。

また、年金事務所や役所でも同様に年金、健康保険、介護保険、税金等の各部署にて手続きを行います。

そしてこれらによって集めた情報を元に、本人の資産と負債を一覧にした財産目録と、1年間の収支予測を作成し、就任報告を家庭裁判所へ提出します。

ここまでをおおよそ就任後1ヶ月以内に行います。

2.財産の管理(就任後~)

財産管理で最も基本的な業務が「預貯金の入出金管理」です。

定期的にすべての口座を記帳し、年金等の収入、家賃や光熱費等の支出に問題がないか、不明の入出金がされていないのかチェックを行います。

また、施設費や介護サービス費、医療費など、引き落としで対応できないものがある場合は、請求の都度、振り込みや現金にて支払いを行います。

そしてこれら一連の入出金を帳簿に記帳し、領収書やレシート等とともに保管することになります。

このように「現在の資産と収支を注意深くチェックし、現状の生活で問題はないのか、本人の為に改善できる部分はないのか、不要な出費はないのか等をしっかり管理する。」

これが基本的な財産管理業務となります。

また、本人の持っている財産によっても、やらなくてはならない業務が出てきます。

たとえば不動産を持っている方の場合は、定期的に家の状態のチェックを行い、必要であれば修繕や庭の剪定の手配などを行い、また、賃貸物件を所有されている方の場合は、家賃の請求や受領、物件の管理、場合によっては管理会社との各種契約手続きも必要となってきます。

さらに、預貯金等の資産が目減りしたり、特段の事情があれば、不動産の売却を行うことも重要な業務です。

査定の依頼から仲介業者との媒介契約、買主との売買契約、売買代金の決済手続きやこれらに関する様々な手続きや書類収集も行わなければなりません。

居住用不動産であれば家庭裁判所の許可申立ても必要となります。

他にも生命保険等の保険契約がある方の場合、必要に応じて保険金を請求することも必要ですし、誰かにお金を貸していた場合は、その回収も行う必要もあります。

また、本人の親族が亡くなり、本人が相続人になる場合は、他の相続人との遺産分割協議や相続手続き、場合によっては相続の放棄を行わなければならない場合もあります。

他にも、本人の状況や所有資産等により、やらなくてはいけないことは多種多様にありますが、他人の財産を預かっていることを十分に自覚した上で、適切に管理しなければなりません。

3.身上監護(就任後~)

身上監護は介護や身の回りの世話をすることと思われがちですが、実際は、本人の身の回りの生活上必要な手続きを行うことです。

自宅の賃貸借契約や更新契約、それに関する費用の支払いを行ったり、本人に介護サービスが必要であればその契約の締結等の手続きを行い、施設に入所が必要であれば、本人の状態や資産状況を見極めたうえで、施設を選定し、その入所契約を行います。

そして定期的に面会をした上で適切にサービスが受けられているかをチェックします。
もし、問題があれば改善するように求めることも必要です。

また医療契約及び病院への入院に関する手続きを行ったり、病院へ同行してくれる人の手配も行います。

介護保険、要介護認定、健康保険等の役所への各申請、さらには還付金の申請や受領を行うのも重要な身上監護の業務です。

還付金というのは想像以上に多く、毎月結構な金額が戻ってくることあるので、申請し忘れてしまうと大変です。

その他にも、生活保護の申請を行ったり、障害年金の受給申請などを行わなければならない場合もあり、身上監護も財産管理と同様に、本人によってかなり幅広い手続きが必要となります。

4.定期報告(就任後~)

財産管理・身上監護の業務を継続的に行って、就任から1年ほど経過すると家庭裁判所への報告が必要となります。これが定期報告です。

現在の資産状況や収支状況を通帳のコピーや様々な証明書類とともに、家庭裁判所に報告します。

当然、不自然な点や不足書類があれば補完を求められますし、問題が顕著であったり、報告自体を出さなければ、裁判所の調査が入るので、きちんとした報告書を出す必要があります。

そして、この定期報告時に、報酬付与の申し立てを行うことができます。

実は、成年後見人は報酬を請求するかしないかは任意です。

親族後見人の場合は報酬付与の申し立てをしない方も多くいらっしゃるようですが、私たち専門職後見人は当然に申立てさせていただいております。

この報酬は、報告前1年に対する報酬で、実質的に後見人報酬は1年働いた後の後払いです。

後見人の報酬というのは、原則として本人の資産によって決まった基本報酬特別の業務を行ったことによる付加報酬というのがあり、裁判所による報酬付与の審判が出るまで、最終的に報酬がいくらもらえるのかわからないという代物です。

申し立てをしてしばらくすると、後見人あてに【報酬○○円】と書かれた報酬付与の審判が送られてきます。

後見人はそれを確認した上で、本人からその金額を受け取ることになります。

以上が、成年後見人としての1年です。

原則として、本人が亡くなるまで、このような業務を継続的に進めていくことになります。

いかがでしょうか?
成年後見人の仕事について、理解が深まりましたでしょうか。

成年後見人というのはとても大変で重要な仕事だということが少しでもご理解いただければ幸いです。

当窓口では、任意後見・法定後見に関するご相談をはじめ、その後の手続きや実際の後見業務の受任もしておりますので、お気軽にご相談ください。

私たちのサービスが、お役に立ちますように。

当記事は、記事執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
この記事の監修者

新宿の司法書士 中下総合法務事務所
代表司法書士 中下 祐介

司法書士/簡易裁判所代理権/民事信託士
宅地建物取引士/家族信託普及協会 会員
ファイナンシャルプランナー

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