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亡くなった後の事務手続き(死後事務)について

皆様は、ご自身の死後、どのような手続きが必要になるかご存知でしょうか。

亡くなった場所にもよりますが、まず、病院で亡くなった場合、通常は安置所に安置されます。

しかし、病院の安置所は可能な限り早く出なければなりませんので、すぐに葬儀会社の手配が必要となります。

そして葬儀会社を決めたら、どこでどのような葬儀をあげるのか、もしくは直葬にするのか、どこで火葬をして埋葬するのかなどの詳細を決めていく必要があります。

これと並行して、役所への死亡届の提出、保険金の請求、年金等の手続きをしなければなりません。

また、病院の費用の支払い、ご自宅が賃貸の場合や施設に入所していた場合は、家財を処分し、明け渡した上で、費用の精算なども必要になってきます。

ざっと挙げてみただけでも、亡くなった後の事務手続き(以後、「死後事務」といいます。)として、これだけのことを死後の短期間に行う必要があります。

こういった死後事務を、ご自身が亡くなった後、どなたに任せるか決められていますか?

一般的に、配偶者や子、親族等の相続人がいる場合は、その方にやってもらうことになると思います。

しかし、親族がいらっしゃらない方、いらっしゃっても遠方に住んでいる場合、親族が高齢で対応が困難な場合、親族に迷惑を掛けたくないとお考えの方などは、死後事務に備えて、生前の準備が必要となります。

では、死後事務に備えて、どのような準備ができるでしょうか?

遺言

おそらく、多くの方が真っ先に思いつくのは遺言ではないでしょうか。

自分が亡くなった時に備える手続きとして一番ポピュラーな方法は遺言です。

遺言があれば、基本的には、自分の残した財産を、自分の望む形で、自分の望む人に承継させることができますので、とても重要で優先度の高い手続きです。

しかし、残念ながら「死後事務」に関しては、遺言では対応することが出来ません。

遺言は、実現できる内容が限定されています。

もう少し詳しく言えば、遺言は、内容としてはどのような希望であっても記載できますが、記載することによって法的な効力が生じることは限定されているという意味です。

例えば、「現金100万円を○○に相続させる」といった、財産の処分方法などは、基本的にそのまま効力が生じますが、今回のテーマである「死後事務」に関しては効力が生じません。

したがって、仮に遺言に、死後事務についての記載をした場合であっても、法的な効力が生じない以上、基本的に死後事務についての解決策にはなりません。

成年後見制度

次に、亡くなった方に成年後見人や保佐人、補助人、任意後見人がついていた場合は、後見人の方が死後事務を行ってくれるでしょうか。

答えは「NO」です。

成年後見人等は、本人の死亡により職務が終了するため、すべての代理権が無くなってしまいます。

したがって、本人の死後は、成年後見人等は、相続人等の承継者に対して、財産の承継を行うことが主たる業務になります。

現実問題として、本人が亡くなった場合に葬儀を行ったりすることができる親族等がいない場合は、さすがに 知らんぷり をするわけにはいきませんので、後見人等が葬儀の手配や埋葬等の手続きを行うほかないケースもあります。

ただ、後見人等が死後事務を行うにあたっては、本人の意向が分からないことや職務権限の問題もあるため、後々トラブルに発展しないよう慎重な対応が求められ、負担も大きいといえます。

本人に後見人等がついていた場合、ある程度の死後事務を行ってもらえる場合もありますが、本来の業務範囲ではないので、必ず死後事務を行ってくれるわけではありません。

この点は、誤解をされている方が非常に多いので、注意してください。

死後事務委任契約

それでは、遺言でも成年後見制度でもカバーできない死後事務について、有効な手続きは何でしょうか?

それが、「死後事務委任契約」です。

死後事務委任契約とは、「生前に死後の事務を行ってもらう人と、死後事務についての具体的な内容を取り決める委任契約」のことです。

通常、委任契約は、民法の規定により委任者が死亡した場合は終了してしまうのですが、契約の内容に、「委任者の死亡により終了しない」旨の特約を付けることによって、委任者(本人)の死後でも効力の続く有効な契約とすることができます。

ですから、死亡によって終了しない「死後事務委任契約」を締結しておけば、契約をした相手(死後事務を依頼された方)は、本人の死後事務を、正当な権限に基づいて本人の望む形で行うことができます。

また、委任できる内容ですが、基本的には死後事務の全般を自由に委任することが可能です。

具体的に委任できる死後事務の一例

下記のようなものがあります。

・死亡届、健康保険資格抹消、年金資格抹消等の役所手続き

・葬儀手続き、埋葬手続き

・施設や病院の退所退院手続き、それに伴う費用の精算

・賃貸住宅の明け渡し、それに伴う家財の処分や家賃の精算

・公共料金等の解約精算手続き

これらは、あくまでも一般的な委任事務の一例ですので、ご自身の希望や環境によって上記の中から必要なものだけを選ぶことや、上記以外の事務も自由に委任することができます。

死後事務の内容として珍しいものとして、最近急増している「デジタル遺品の処分」というのがあります。

現代は、多くの方がSNS(フェイスブックなど)やブログ、メールをしているため、パソコンやスマホ等を所有しています。

亡くなった時に、これらがどうなるのか考えたことはありますか?

パソコンやスマホの中には、親族にでも見られたくはない画像や、死後すぐに解約してほしいアカウントもある人も多いと思います。

しかし、実際にはIDやパスワードがわからないと対応できないものが多くため、放置されてしまいがちです。

そういった事態に備えて、あらかじめ自分の死後に、パソコンやスマホのデータ消去や、SNSのアカウント削除を、死後事務委任契約の内容として受任者に依頼しておくこともできます。

その他にも、飼っているペットの引受先を見つけてもらうといった内容も死後事務委任契約とし可能と考えられており、まさに自分に合ったオーダーメイドの死後事務委任契約が可能です。

ちなみに、死後事務を誰に依頼するかについて、法律上の決まりや資格はありません。

ですから、ご自身が信頼できる方を選んでいただくのが一番だと思います。

もし、適任者がいない場合や、より確実に安全にということであれば司法書士等の専門家にご依頼いただければ、より一層安心できるのではないでしょうか。

一点ご注意いただきたいことは、司法書士等の専門家に依頼する場合は、報酬が発生します。

また、親族に依頼をする場合に報酬を決めるケースは少ないと思いますが、親族だから無報酬でなければならないということはありません。

報酬を設定する場合は、契約の中で明記することが必要ですので、その内容には十分注意してください。

そしてもう一つ、死後事務委任契約を結ぶにあたって、注意する点があります。

それは、「費用をどうするか」です。

ここでいう費用とは、病院等の精算、葬儀等の費用、家財処分等の費用です。

委任者が亡くなった場合、委任者名義の銀行口座は凍結されてしまいますので、委任事務に必要な費用を用意することができず、死後事務の遂行が困難になってしまう可能性があります。

これを回避するために、必要な費用をあらかじめ受任者に預けるなどの方法も考えられますが、事前に受任者に預けた場合は、このお金が受任者の財産と混在することや、死後事務以外に流用されてしまう危険性もあり得ます。

そのため、委任者の死亡時に、受任者が死後事務に必要な費用を受け取れるように、受任者を受取人にした生命保険等を利用することや、必要な費用を受任者以外の第三者(信託会社等)に預けるなど、状況に応じて検討することが必要です。

いかがでしたでしょうか?

死後事務委任契約は、これからの時代、様々なニーズに対応ができ、個人の想いを実現できる可能性を秘めています。

死後事務委任契約について相談をしてみたい方や、すでに利用を検討している方は、早い段階で専門家に相談されることをおススメします。

当窓口でも、今回取り上げた、「死後事務委任契約」をはじめ「見守り契約」、「財産管理契約」、「遺言」のご相談や手続きもお受けしておりますので、お気軽にお問合せください。

私たちのサービスが、お役に立ちますように。

当記事は、記事執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
この記事の監修者

新宿の司法書士 中下総合法務事務所
代表司法書士 中下 祐介

司法書士/簡易裁判所代理権/民事信託士
宅地建物取引士/家族信託普及協会 会員
ファイナンシャルプランナー

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